起業家心得


「夢と希望に溢れ起業をする。」「自分の力を試してみたく起業する。」「暖めたアイデアを世に出したくて起業する。」等々。起業をするには様々な動機があると思う。

会社を立ち上げるのは簡単である。法務局に会社設立の書類を提出しさえすれば会社はできる。

しかし、会社を存続し続けることは容易なことではない。存続できなくなり倒産ともなると、経済的にも精神的にもリスクを負い、人生までも変わってしまう。

夢や希望、一つのアイデアだけで会社を存続させることは容易ではない。というか不可能である。

起業するということは一家の主、即ち法人であれば代表取締役となるわけである。代締は会社の全ての責任、運命を握ることになる。それは即ち、従業員やその家族の人生を左右する責任を負う。さらに関連の取引業者に対しても責任を負う。当然のことだが顧客に対しても責任を負う。

起業するということは、それらの社会的責任を負うことでもある。

だが、私もそうであったように、多くの起業家は起業のメリットばかりに目がいき「起業したら、成功したら、高級車に乗りブランドに身を包み…」などの「たら話」に心を奪われ、自分の果たすべき責任の重さについては考えようとしない。

起業後の事について、今一度立ち止まり「事業の存続」と「社会的責任」に対して真摯に向き合って頂きたい。

 

 

事業の存続

往々にして起業する人は起業が目的になっしまいがちだが、起業が目的ではないはずである。

起業の理由はどうであれ、起業後その事業が存続し続けるかどうかが問題である。冒頭に記したように、夢や希望、一つのアイデアだけで会社を存続させることは不可能である。もしそのような理由で起業を考えているのなら、起業を思い止まったほうが良いと思う。

 

知識武装とは?

起業は簡単にできるが存続させるには、血の汗が出るほどの努力が必要である。

私事になるが、私は23歳で起業した。23歳の若さでは事業の何たるかも知らない。当然、マーケティング、イノベーションや事業戦略の事も聞いた程度でしか知らなかった。そんな若造がどうにか事業を営んでこられたのもバブルの真只中で事業を営むことができたからである。

今の時代はバブル期のように作れば売れるような時代ではない。余りにも時代が違いすぎる。そのような時代の中で事業を存続させるのは容易なことではない。起業の前にそれなりの武装をしなくてはならない。

武装とは知識で身を固める事である。事業に関する知識を身に着けることで、見えなかったものが見えてくる。落とし穴も見えてくる。チャンスも見えてくる。

知識は万能ではない。しかし、知らないより知っておいたほうが有利に決まっている。スタートラインも変わってくる。

 

真の利益とは?

事業を継続するには利益が必要である。往々にして利益と言うと、売り上げや経常利益などお金に関連することと思いがちだが、利益はお金だけではない。お金ばかりを追っていると企業は成長しない。それどころか金融機関に財務状況を良く見せるために、粉飾決算をしてしまうことにもなりかねない。

確かに資金がなければ企業の存続はない。しかし資金だけで企業は成長しない。目に見えない人材、技術、知識、情報等も企業を存続させる。否、利益を生み出すのが「人材の成長」「技術の向上」「新たな知識の習得」「有益な情報」等である。それらこそが企業が存続し得る源泉である。それらこそが真の利益である。

そこに重心を置いた経営こそが、企業を存続させ続けることができる。企業を成長させることができる。そして、利益を上げ続けることができる仕組みの源泉でもある。

 

利益を生み続ける仕組み

真の利益(人材、技術、知識、情報等)を駆使し、利益を生み出すために必要なのがマネージメントである。
限られた真の利益を組み合わせ有効に活用し、利益を生み出す仕組みを作ることができるマネージメントこそが、トップに求められる資質である。

その為にトップマネージメントは会社の全てを把握しておく必要がある。その上で目標を掲げ組織を目的達成へと導かなければならない。マーケティングやイノベーションの知識を駆使し、戦略を練り、アクションプランを作成し、実行に移す。ここで初めて利益を生むことができる。ここで初めて組織として利益を生み出す仕組みを構築できるのである。

利益を生み続ける組織を作ることができるかどうかは、トップのマネージメント力にかかっている。

トップマネージメントに要求される事は多岐にわたるが、最も重要なのが会社を存続させ続けることである。資金そのものも重要だが、明日の存続のためには真の利益も重要だという事を心に刻んでいて欲しい。

 

 

社会的責任

社会的責任と言うとCSR(企業の社会的責任)を思いがちだが、CSRは自然環境や社会のサステナビリティ(持続可能性)を高める経営を行う考え方で、ここで言うところのそれとは多少異なる。

ここで言う社会的責任とは、あなたが興した事業で雇用したり、取引業者との関係で発生する責任や製品(商品/サービス)に対する狭義の責任を指す。

起業当初は従業員も少なく、取引業者もさほど多くはなく、販売量も少ないので責任範囲も狭い。しかし事業が順調に成長してくると責任範囲も広くなってくる。広くなってくると企業の許容範囲を超えてた責任が発生してくる場合もある。

覚えているだろうか、以前パナソニックの前身であるナショナルFF式石油暖房機が不良で事故を起こした事を。
その際、ナショナルは全てのコマーシャルを止め、FF式石油暖房機の回収をコマーシャルに代わりテレビで放映し続けた。後で分かったことだが、ナショナルは社運を賭け放映していたそうである。当時私もテレビでを見ていて、ナショナルの企業姿勢には頭が下がる思いがした記憶がある。

自社製品を社運を賭けてでも責任を取る。これこそが社会的責任である。
その後のナショナルの世間からの評価は言わずとも知れたことである。

何故、社運まで賭けてナショナルは自社製品を回収しようとしたのか?ナショナルの人間ではないので分からないが、憶測として創設者の松下幸之助の創業理念が脈々と今でも息づいているのではないかと思う。

事業を営んでいると決して順調な時ばかりではない。危機に面することが必ず起こる。その時危機にどう対応するかで、その企業のその後が大きく変わるものである。

また、「適正利益を上げる」ことも企業の社会的責任である。
企業の使命の一つに「社会貢献」があるが、企業は事業を通し適正利益を上げる事によって、その使命を果たすことができる。適正利益を出すことができなければ企業の存続もなく、企業の使命でもある社会貢献もできない。
経営者はどの様な経営環境であろうとも適性利益を上げ、税金を納め、国や社会に還元するようにしなければならない。

本来、企業は事業を通じて人間社会の向上に貢献するものでなければならない。従って会社の活動が社会にとってマイナスならば解散すべきである。

会社を興す前に、これら企業の社会的責任についても今一度熟考してもらいたい。

 

 

経営理念の重要性

経営理念とは、創業者や経営者の経営に対する基本の考え方をまとめたもので、全ての経営活動の最終的な拠り所になるものである。

経営理念は企業経営の羅針盤である。「経営理念」を明確にした企業だけが、どんなに環境変化が激しくとも、確固とした経営方針を堅持し、確実に企業経営を維持、発展させることができる。

だが経営理念を生み出すのはなかなか容易なことではない。経営理念には経営者の経営哲学がなければ作ることはできない。経営哲学は正しい人生観、社会観、世界観に深く根ざしたものでなければならない。経営哲学を持つには、自然の摂理、社会の理法のような真理にかなったものが根底になければ、到底持つことはできない。
詰まる所、真の経営理念とは、自然の摂理、社会の理法のような真理にかなったものでなければならない。だからこそ経営者は日々己を律していかねばならない。

また、経営理念はトップマネジメントに関係する人だけが知っていればよいというものではない。社員全員が価値観を共有して、初めてその効力が発揮される。倫理感が高まったり、戦略が定まったりする。だからこそ、経営理念を生み出した経営者は、自らの理念をなんとか浸透させようとするのある。理念と現実とのギャップを埋めようと努力するのである。

現代はサイトを検索すれば、いくらでも経営理念の文言を見つけることができる。しかし経営者自らが生み出した経営理念と寄せ集めの経営理念では、言葉の重み、奥行き、深さは必然的に異なる。それら寄せ集めの言葉が企業経営の羅針盤となることはない。経営戦略へと落とし込むことはできない。人を動かせる言葉となりうる事もない。

経営理念は必要である。だが寄せ集めの経営理念ならないほうがましである。
起業したばかりの若い会社で企業理念を作ることは容易ではない。必要だからと言って、早急に用意できるほど簡単なものではない。時間をかけ理念を作って頂きたいと思う。