「自分の力のなさ」を思い知る


「自分の力のなさ」を思い知る

まず、「力のなさ」で痛烈に感じたのが『人間力』でした。
経営者の一番の仕事は人を作ることです。ですが、経営が順調だと自分がしていることが正しいと勘違いしてしまいがちです。自分が正しいと思っているから、必然的にトップダウンが行われます。トップダウンが悪いことではないのですが、トップダウンの欠点は従業員を委縮させてしまいがちになることです。多分従業員は「俺が何を言っても聞いてくれない」と思っていたことでしょう。そうなると仕事へのモチベーションも下がってくる。効率が悪くなる。悪循環の始まりです。

人は自分が正しいと思うと成長しなくなる生き物です。(私だけかもしれません)
自分がすることが最高のものだと思い、それを押し付けようとする。何故こんな事も分からないのかと人を見下しだす。

そして極め付けが、どっからか持ってきた経営理念を掲げ、中身がないのに立派な人物の振りをする。高級車に乗り、オーダースーツに身をまとい、身なりだけはどこかの立派な会社の社長さん。妻がいる身で女を作り、話すことは取って付けた偉そうな話ばかり・・・。

自分が人として努力も成長もしない人間が、従業員を成長させることなどできるはずがありません。そんな自分に気づかされたのも倒産してからのことです。遅すぎ・・・です。

慰めの言葉でこんな事を言われたことがあります。「失敗するからこそ、見えないモノも見えてくる」確かにその通りです。でもそれって言い訳でしかありません。失敗しないように日々努力するのが経営者です。何時如何なる時も、自分を成長させよう、向上させようという気持ちを持ってない人間は、人の上に立つことをしはいけないという事です。

 

組織の長に必要なのがマネジメント力です。マネジメントの使命は資源(人・物・金)や時間を管理し成果を得る事にあります。

会社を運営していく中で、マネジメントができていないと組織として機能しなくなります。その要因の多くは資源のなかでも「人」に関することです。物や金、時間は数値として管理できます。しかし人は数値では計ることも、ましてや管理することもできません。理論で動かすこともできません。唯一できるのはその人の心を動かすことです。心が動くと人は動きます。

生活の為に会社に来ている従業員と、この人(社長)の為に働く従業員。どちらがより成果を得ることができるかは分かり切ったことです。この二つの違いを決定付けるのは従業員ではありません。社長の「人として」です。

正にマネジメントの真髄はここにあります。マネジメントの方法論は書物にいくらでも書いてあります。しかし、この真髄だけは自分で築きあげていくしか方法はありません。

この真髄を得るためにマネジメント自身が、人の為になる正しい知識を身に付け、正しい行いを日々実践していくしかありません。そうすることでしか、人間力を身に付けることはできません。

外見はそこそこの身だしなみで良いんです。車も普通の自動車で良いんです。そんな事に大切な時間やお金を使うなら、人間力を磨くことに時間やお金を使うことです。それが自分の為であり、社員の為であり、顧客の為になります。

「力のなさ」で二番目に感じたのが経営者としての知識でした。

知識は財産です。知識は如何なる状況下でも、如何なる人も奪い取ることができない。そして、知識こそが逆境を乗り越えることのできる、唯一無為の武器だという事を知りました。

あの時マーケティングの事をもっと知っていたら、組織構造の事を、戦略の事を深く研究していたら・・・。倒産して初めて分かりました。もっと知識を持っていたら、倒産の憂き目を見ることはなかったと思います。

順調ほど怖いものはありません。順調な時ほど必ずやって来るであろう逆境に準備しておかなければなりません。

順調な時は、この時は永遠に続くものだと勘違いしてしまいがちです。そんなことは絶対ありません。必ず逆境がやってきます。逆境は時代の変化、認識の変化、製品(商品・サービス)の陳腐化、そしてあってはならないのですが、経営者の怠慢です。

これら変化の一例を紹介します。まず、時代の変化です。時代の変化では、リーマンショックやバブル崩壊などのように突然やって来るものと、インターネットみたいに徐々に浸透していくタイプとがあります。

実は、リーマンショックやバブル崩壊なども、情報や経済指標などを注意深く読み解くと、突然ではなく当たり前に起こる事を事前に知る事ができます。当時の私みたいにそれらに疎い者にとっては、バブル崩壊は突然の出来事でした。
また、徐々に浸透していくタイプは、変化に気付きにくく対応が遅れ、経営に大きく影響する事もあります。このタイプは認識の変化にも言えることです。

認識の変化も経営を大きく左右します。認識の変化をいち早く読み解くのはなかなか困難です。自己流ですが、私はテレビのコマーシャル、国会討論、流行しているファッション、観客動員数の多い映画、インターネットの検索数・・・等をチェックして、マクロ的な認識の変化を見ています。

情報によって認識の変化は起こります。より多くの情報を多方面から収集・分析し、これから起こるであろう変化を予測するしかありません。

また、製品の陳腐化は、売上高や在庫量などをグラフ化することで分かります。近年はヒット商品が出たら直ぐに追随する新たな商品が市場に出回るため陳腐化も早くなっています。他社が追随商品を出す前に新商品を市場に出すことで優位性は保たれますが、研究開発費や販促費等に投資していかなければならなくなります。

これ以外にも経営へ影響を与える要因は多数あります。それらの要因にいち早く気付き、適切な処置をすることで逆境を乗り越えることができます。いち早く気付くにはアンテナを多方面に張り、正確な情報をキャッチすることです。適切な処置をするにはキャッチした情報を分析し変化に対応することです。

分析するためには、SWOT、3C分析、5フォース分析などの分析ツールの知識と、それらの正しい使い方を知っておく必要があります。これらの分析ツールはマーケティング戦略にも使うので、覚えられることをお勧めします。

 

私は倒産して「人間力」と「知識」の重要性を痛感しました。この二つは人生の教訓として、今も私の心の奥底に深く刻まれています。

「人間力」「知識」に到達点はありません。日々、自分と闘い向上し続けることこそが経営者の姿です。起業を考えておられるなら「転ばぬ先の杖」と言う諺があるように、今から準備をしても遅くはないと思います。

 

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